自家製味醂の完成

トロントで手に入らない日本の調味料はない、と思う。でも美味しい調味料となると話は別だ。私はトロントに来て間もないころ、スーパーで安いみりんを購入してショックを受けた。美味しくなかったのだ。ラベルを見ると「みりん風調味料」の文字。それからというもの、私は「みりん」を使うことはなかった。

でも味醂が必要な料理もある。そんな時は作るのを避けたり、作っても物足りない味になったりしていた。2ヵ月前のある日、2日後から始まる味醂作りの講習会(オンラインレクチャーを受け個人で仕込み、出来上がりの頃に集まって個々の味醂を試飲する会)が催されると知り、慌てて申し込んだ。

意外にも味醂を仕込むのはとてもシンプルで簡単だった。蒸したもち米と米麹、それにお酒を入れて混ぜておしまい、である。通常、日本では焼酎を使用するらしいが、カナダではとても高価なので私はウォッカとウィスキーを使い2種類仕込んだ。この3つしか材料は必要ないのだが、この比率を変えることで、違う味の味醂ができるという。発酵して味醂になるまで最低2ヵ月。台所の隅に置いて観察の日々が始まった。

仕込んだ直後のもの。もち米がお酒に浸かっていないので少し不安である。

途中でかき混ぜながら待つこと2ヶ月、味醂が完成した。

なんとなくもち米が溶けている。

米麹ともち米が柔らかくなり発酵したことがわかる。不思議なもので水分はもち米の少し上まできていた。もち米があるせいか味醂ができたという実感はないが、絞ると味醂のようなものが取れた。味醂と味醂粕(こぼれ梅、と言うらしい)を持って味醂の試飲会へ行く。

とろみのある白濁色の味醂とこぼれ梅

講習会の受講生である十数人の自家製味醂を飲み比べ日曜の朝からほろ酔いに。どなたのも個性があって美味しかったのだが、お酒の種類の違いはもちろんのこと、蒸したもち米の水分量などでも味醂の味や様子が違った。材料と工程がシンプルなので、工程を大きく逸脱していなければ失敗することなく味醂が完成するのだ、ということを実感する。

絞った味醂に賞味期限はなく、年数を重ねるとさらに発酵が進み味に変化が起きるらしい。搾りたての現在は白濁色だが、時間をおくと分離して透明な味醂も取れるという。今すぐにでも使ってしまいたい気分だが、さらに発酵させた味醂がどのような味になるのかも気になるので、悩みどころだ。

1年半前にも同じ講師の先生のもとで自家製味噌を仕込んだが、日本の発酵食品は、作るのがシンプルだからこそ身体によく、そしてなにより美味しいのだと思う。

講習会で提供された味醂を使った料理。カナダでは手に入らない日本で売っている本みりんと三河みりんも試飲。

日本に住んでいたら味噌も味醂も仕込まなかったと思う。でもこうして日本から出て本物が手に入らない状況だからこそ、自分で仕込み、その本来の美味しさについて考えることができる。それはとても贅沢で、このような機会をいただけることに感謝したい。

今夜の夕食は味醂を使って煮物かな。

米麹は美しい。これは講師の方の自家製。

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自家製味醂の完成” への4件のフィードバック

    • mikiando のコメント:

      貴重な体験をありがとうございました!
      次はもち米少なめの味醂作りたいです^^

    • mikiando のコメント:

      次はいつトロントに来られますか?あまり量はありませんが、おすそわけします^^

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