真っ暗闇での食事 restaurant- O.Noir

真っ暗闇の中で食事を取るなんて想像できるだろうか。それも薄暗いなんてものではなく、本当に本当に真っ暗で何も見えない中での食事だ。

トロントにずっと気になっていたレストランがあった。O.Noirである。Noirはフランス語で黒という意味らしい。ここは真っ暗の中で食事をいただける珍しいレストランだ。東京にも以前あったが、行こうと思っていたのに結局閉店してしまって行けずじまいだったのでトロントで行けることが嬉しかった。

メニューは2つ。2種類コース(スターターとメインまたはメインとデザート)と3種類コース(スターター、メイン、デザート)から選ぶことができたが、私たちは3種類コースを選択した。

ちなみにメニューを選ぶ時に真っ暗だと何も見えないので、暗い部屋に入る前にメニューを選ぶ。

壁には点字が。まだここは明るいので安心。

メニューはいろいろ選べる

私はStarterにSurprise Meat、Main DishにO.Noir Mignon Served with Potatoes and vegetables、DessertにSurprise dessertを注文し、友人はMain DishにPesto Chicken Breast with Potatoes and vegetablesを注文した。

注文が終わるとサーバーに連れられて真っ暗な部屋へ。本当に何も見えないことに驚きつつも、自分の席まで席の間を歩きながらたどり着かなければいけないので、席に付くだけで大仕事であった。

やっとの思いで席に着くがどうも落ち着かない。だって本当に何も見えないのだ。テーブルの上に、お皿があり、その上にナイフ、フォーク、ナプキン、丸い何か(バターだと後でわかる)があることを手をつかって確認する。なんだか急に心細くなっていつもよりおしゃべりになる。そうしているうちに、温かいパンがサーブされるが、それにお皿の上に置いてあるバターに付けて食べるのも一苦労。ナイフなんて使っていられないのでパンを直接バターに付けるのだが、バターがどれほど残っているのか、パンをバターにこすりつけてもパンにバターがどれくらい付いているのかは食べるまで分からない。結局私は全然バターの付いていないパンを食べることになった。

目の前に座る友人が今食べているのかどうかというのは、不思議なもので何となく音と雰囲気でわかる。私がもたもた食べていると、Mikiはまだ食べているの?とツッコミを受けたので、友人は私よりも早く食べられているようだった。

StarterとDessertはSurpriseを選んだので最初は匂いを嗅ぐことからはじまった。Starterは牛肉の入ったカレーライスだった。スプーンを持っていなかったために最初はライスがあることに気が付かず牛肉だけをフォークで食べていたのだけど、途中でライスもあることに気が付いた。

Dessertは一口食べてチーズケーキであることが判明。私は途中でブルーベリーらしきものを発見したが、同じメニューを頼んだはずの友人はブルーベリーがないと言っていたので、どんな状態のチーズケーキが出てきたのかを友人と話し合ったりした。

正直なところMain Dishは余裕だと思っていた。あらかじめメニューを知っていたからだ。でもこれが意外と難しかった。私のお皿にはステーキとマッシュポテトとインゲンのソテーがあったようだが、終盤になるまでインゲンの存在に気が付かなかったのだ。いち早くインゲンを見つけた友人は「私のお皿にはアスパラガスがあるから食べてみる?」と言ってシェアしてくれたのだけど、食べてみたらインゲンだったので友人に「アスパラガスじゃないよ」と教えてあげた。がしかし、私はインゲンの英語名を知らなかったので、アスパラガスではないことは言えたのだけど、インゲンであることは伝えられず、中途半端な会話になった。友人はサイドディシュはアスパラガスであることが多いので、アスパラガスだと思ったと言っていた。いかに普段から味わっていないかがわかる。

食事の最中に友人と、目の見えない中で食事を取ることは、見える状態で取るのと何が違うのかについて話し合った。

  •  メニューの内容がわからない
  • お皿にどれくらいの量があるのかわからない(お腹一杯の時に残すことを決断するのが難しい)
  • フォークで何かを刺した時、その刺したものの大きさがわからない(口を小さく開けて食べようとすると、口の周りをひどく汚すことになる)
  • 食べたいものをお皿の中で選ぶことができない(肉を刺したつもりがインゲンだったりする)
  • 全部食べたつもりでも残っている可能性がある
  • 友人と料理をシェアするのが大変(友人がフォークに刺したチキンをくれたが、私はフォークではなくチキンを手でつかんでしまった)
  • 得られる情報が音だけなので、いつもより会話がはずむ
  • 料理の味や触感により注目するようになる
  • 使いたい英単語を検索できない(インゲンを英語で何と言うのか店を出るまで検索できなかった(green beansと言うらしい))

ということで、いかに普段私たちは視覚に助けられて生活しているのかを実感した。他のテーブルではお皿を落としてしまった人もいたようで、大きな音がしていた。友人は、もしここで火事になったら、どうするんだろうね、なんて話していて、そんなことを考えるだけでも恐怖を覚えた。普段目の見える私たちは火事があったら炎の光で前が見えるだろうが、もし本当に目の見えない人だったら、もう逃げられないだろうと思う。

目が見えることに感謝をしつつ、この貴重な機会を存分に楽しんだ。色いろな気付きが得られるはずなので、ここでのお食事はおすすめ。機会があれば来訪してもいいなと思う。

ちなみに、このレストランはサービスアパートメントの地下にあるのだが、このサービスアパートメントは私のトロント生活の原点である。2009年に初めてトロントに来た時に6週間滞在したのがここだった。当時を思い出して懐かしさに浸った。

    地下がレストランの入り口。右に見えるのがサービスアパートメント。
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