サウジアラビア、オマーン、イラク、アフガニスタン。今まで西アジアというか中東出身の知り合いはいたけれど、友達と呼べるような間柄ではなかった。共通点も少なく、何を話したら良いのかわからなかったからだと思う。
そんな私に、最近イラン人の友人ができた。2002年に当時のブッシュ大統領が「悪の枢軸国」と呼んだあのイランである。このこと以外に全く知識がなかったので、イラン出身だ、と言われた時にどんな反応をすれば良いのか正直困った。だけどカナダ生活が長いせいなのか、年齢がほぼ一緒だからなのか、それとも他に理由があるのかはわからないけれど、今のところ違和感なく友人と話をすることができている。
そんな友人と、友人も認める本物のイラン料理を食べてきた。実は今までイランに限らず、友人の出身国の料理を食べるのを出来る限り避けてきた。高い確率で私にとって美味しいと思えるものがないからである。今回もまた怪しいのではないか、と検索に検索を重ねたが、なんだか大丈夫そうだったので、お誘いを受けることにした。
イラン料理と言えば、Kebab らしい。私は伝統的なKebab だというKebab Koobidehを注文し、Zeitoonを友人とシェアすることにし、飲み物にdooqhを注文した。
dooqhとはハーブ入りの飲むヨーグルトだ。砂糖ではなく塩が入っているので甘くない。一口目はハーブが強すぎるような気もしたが、飲んでいるうちに慣れてきて最後まで美味しく飲めた。甘くないので食事によく合う。
Kebabは日本にはない香辛料が使われているようだったが、見た目通り美味しい。お皿に添えられているバターは、ごはんと混ぜていただくらしいが、友人はバターを混ぜるのは好きではないらしく、混ぜていなかったので私も友人の食べ方をまねて混ぜるのはやめておいた。
驚いたのはZeitoonである。種が取り除かれた丸ごとのオリーブとペースト状になったナッツが混ざって、上にザクロの実が乗っていた。それを焼きたてのパンと一緒にいただくのだ。私は食べ始めて早々に目の前にある大量のKebabは次の日の食事用にテイクアウトすることに決め、Zeitoonを存分に堪能した。すごく美味しく、パンに良く合う。
食後には、友人いわくイランで「水代わりに飲む」というイランの紅茶をいただいた。ヨーロッパの紅茶に比べて香りが強いのだが、私はヨーロッパの紅茶よりも好きかもしれない。
紅茶がテーブルに置かれるやいなや、友人はにやにやしながら伝統的な飲み方を説明し始めた。なんと口の中に角砂糖を入れてから紅茶を飲んで、口の中で紅茶と砂糖を混ぜて飲むのだと言う。口の中に砂糖があることでより甘さを感じやすいものの、紅茶を一気に飲まないと当然砂糖は口の中で溶けてしまう。紅茶は熱かったので、のんびり飲んでいた私は何度も角砂糖を口の中に放り込むことになり、間違いなく砂糖をカップに入れて飲む時に比べて多くの砂糖を摂取することになった。一方で友人は、ささっとひとかけらの角砂糖ですべての紅茶を飲み干した。猫舌のイラン人がいたとしたら、きっととても太っているに違いない。
実は、この一見普通に見える角砂糖は、イランの特別な砂糖らしい。友人に「砂糖の塊を買ってきて、家で専用のはさみで自分で好きな大きさに切るんだよ~」と言われ、全く想像できず混乱したが、なんとこんな状態のものを買ってくるらしい。すごい迫力である。
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確かにテーブルにある角砂糖は大きさも型もまちまちだったので、誰かが切ったようだった。
イラン料理は最初から最後までとても美味しかった。全然馴染みのない国だったけど、なんとなく親近感を覚え始めたのだった。移民が多いトロントでは色いろな国の人に出会う機会や、文化に触れる機会がたくさんある。これがトロントの魅力だと思う。だから私はトロントが好きなのだ。