カナダの選挙結果をみて思うこと

選挙結果が出てから少しもやもやした気持ちになっている。そして選挙という制度は万能ではないのだとも。

カナダの国土は広大だ。世界ではロシアに続いて2位で約999万平方km、つまり日本の約26倍もある。国内なのに東と西の端では4時間半も時差がある。国内の時差がない日本からしたらなんだかおかしな感じだ。土地によって人口も全然違えば主要産業も異なるし、メインとなる公用語も違う。

だからだろう。どこに住んでいるかでカナダ国民が政府に求めていることが違う。その選挙結果がこちら。

赤が自由党、青が労働党(選挙翌日のToronto Starの紙面より)

ここで私が気になるのは2点である。州や準州による議席定数の違いと、議席を取った党の偏りだ。

人口に比例して議席定数が増加するのはわかるが、その差が著しい。一番人口の多いオンタリオ州(私の住むトロントもこのオンタリオ州に属する)の定数は121。ここでは多くの自由党議員が当選している。一方で、アルバータ州(定数34)とサスカチュワン州(定数14)は一人として自由党議員の当選者はいない。それはこの地域の主要産業である石油産業に対して自由党が好意的でないことが原因だろうと思われる。ちなみにこの地域では前回2015年に自由党が快勝した時でさえ労働党支持者が多かったし、前回の選挙後からの世論調査も一貫して労働党支持が上回っている。

前回の2015年の選挙から今回の選挙までのアルバータ州の世論調査の結果。青が労働党、赤が自由党である。(CBC Poll Trackerより)

私は今回の選挙の前に前回の結果などを調べていて、これでアルバータ州の人は不満はないのだろうか、とアルバータ州出身の友人に聞いたら、そういうものだから仕方がないのだ、という答えで拍子抜けした。その時は連邦政府が自由党でも州政府が労働党だからなんとか折り合いをつけているのかな、と思っていたのだけど、どうやら今回は少し様子が違うらしい。カナダ西側の人たち(マニトバ州もサスカチュワン州もカナダの西側に位置する)が独立しようという動きがあるという。最初は何の冗談かと思ったが、このFacebookページに24万人もメンバーがいて少し驚いた(2019年10月24日現在)。

そこで私はカナダではケベック州(カナダで唯一のフランス語圏)がカナダから独立するかを決める住民投票を1995年にして賛成49%、反対51%で否決されたという歴史を思い出した。今回の選挙結果でカナダの西側地域が独立運動を本気でするとは到底思えないけれど、選挙結果に大きな不満を持っていることには間違いないし、選挙とはある意味で「不公平」なものなのだなと思ったのだった。

オンタリオ州トロント市に外国人として生活している私は、今回自由党が勝利したことを大変嬉しく思っているし、これからもオープンで弱者に優しいカナダであってほしいと思っている。でもそれは私の属性がそのように考えさせていることに間違いなくて、立場や状況によってそれを善しとしない人もいるのだ、ということを改めて思い知ったのだった。

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