日本の大学生は怠惰なのか

東京はどこも人だらけだな、などと思って吉祥寺のカフェに入ったら、そこでもたくさんの人が勉強していた。日曜の夕方にどうしたのだ、と思ったら、大学入試の真っ只中だったらしい。

隣の席で制服姿の女の子が数学の問題集をやっている。明日が入試の本番で今日は朝の4時から勉強しているらしい。

後から来た友人に、「落ちるのがわかっているのにこんなに勉強するなんてバカらしい」と言って笑っていたけれど、言葉とは裏腹に友達が合流した後もほとんど話さず勉強に没頭している。

トロントではカフェで勉強している高校生を見ることがない。その代わりに大学生を良く見る。テスト前は大学生のグループでカフェが満席になるほどだ。

カナダの大学入試制度は日本とは違い、一発勝負のテストではない。高校の成績やプロジェクト、授業態度などが評価の対象になる。だから入試前に寝ないで勉強する、ということはないと聞く。

その代わりに、大学に入った後には多くの課題と難しいテストが待ち受けていて、それにパスできない多くの学生が留年する。だから大学生はとにかくとにかく一生懸命勉強するのだ。

よく日本の大学生は国外の大学生に比べて勉強しない、などと批判めいた言い方をされることがある。でもそれは日本の大学生が不真面目で怠惰なのではない。

日本の学生も国外の学生も、必要な時に勉強している、というだけだ。

日本の大学でいくら勉強をがんばっても、社会的にあまり評価の対象にならないし、就活でそれほど成績が重視されることもない(文系学部の場合)。私は経済学部を卒業しているが、私が就職した日本の会社では内定が出た後で成績証明書を提出したと記憶している。そんな中でどれほどの学生が熱意を持ち続けて勉強できるだろう。

カナダでの就活に関して言えば、履歴書に「成績優秀者」の文字を入れることができる。だから一生懸命勉強し、優秀な成績を収めれば履歴書に記載でき、就職にも良い影響を与えることができる。だから皆、一生懸命勉強するのだ。

今後の人生を考えると、高校生が大学受験のためにする勉強より、大学で学ぶ専門知識を身に付けた方がより将来に繋がる気がしている。日本はがんばるところが少しずれていると言わざる負えない。

人々の行動は社会制度に大きく依存するので、日本の大学生は怠惰だとむやみに批判するのではなく、なぜ勉強をしないのかについて考えることが必要なのだと思う。

隣の席の日曜朝4時から勉強している女の子が言っていた。受験が終わったらスマホゲームをやりまくるのだ、と。そりゃ朝4時から勉強するくらい勉強してきたのだもの、月曜日の入試が終わったらリラックスしてほしい。火曜日の今日、彼女はリラックスしているだろうか。そうだといいな。

がんばれ日本の受験生。

右の席では勉強している女子高生、左の席では「生き方(稲盛和夫著)」を読む社会人男子。日本人は真面目だ。

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