カナダへの移民の歴史を活用した地域起こし―和歌山県三尾②

前回のカナダへの移民の歴史を活用した地域起こし―和歌山県三尾①では京都外国語大学とのプロジェクトについて紹介したけれど、それ以外で行っているメインの地域起こしについて紹介したい。

そもそも三尾地区は、アメリカ村(アメリカ大陸(カナダはアメリカ大陸にある)に移住したのでこの名前に)と呼ばれ、カナダから帰国した住民が和洋折衷の家を建てたため日本の建築様式とは異なる家屋が多い地域だ。古くから漁業が盛んな地域だったようだけど、大阪の漁師との漁場争いに負け生活は困窮。そんな時、工野儀兵衛という人がスティーブストンへ渡り、多くの鮭が獲れることを知り故郷へ電報を打って報告したのが移民の歴史の始まりなのだと言う。

当時、日本からブラジルやオーストラリアなどへ政府の援助を受けて移民するケースが多かったらしいが、三尾地区の人たちは自力でスティーブストンに移り住み、故郷へ送金をし、学校建設や神社へ寄付するなどして、故郷の経済を支えた。第二次世界大戦の際に一部の住民は三尾地区へ戻ったが、戦後またスティーブストンに戻るなどして、人の交流は続いた。

年月が経つにつれカナダでは日系2世3世の世代になり、日本との交流は減少した。三尾地区では人口減少や高齢化が原因で小学校が廃校、アメリカ資料館も閉鎖、漁業も衰退してきたという。そんな時に日系移民を活用した地域起こしが始まったのだった。観光・ふるさと教育、郷土を愛する教育をしていく、と言っていた。

タウンウォッチングを実施し、郷土食のレストランを作り、和洋折衷の民泊を始め、そして資料館も再開させた。11歳から18歳を対象にした英会話教室も週に一度開催。来年2019年にはバンクーバーに使節団として17人を送り込み、ホームステイをするのだそうだ。帰国後には、地域でのバイリンガルツアーガイドとして活躍する予定らしい。学校との協力も京都外国語大学だけでなく、和歌山大学や地元の高校とも行っており、様ざまな人を巻き込んで実施されている。イベント時の質疑応答の際には、聴衆から新しい提案を受けていたし、これからも色いろな施策を打っていくのだろうと思う。

将来的にはカナダの和歌山県人会と交流しながら、三尾地区を日系人が訪れる場所にしたいと言う。自力でカナダに移民していった歴史を通じて、三尾地区を強い意志を持ち続けることを学ぶ場にしたいと担当者は熱く語っていた。まさに強い意志を持って地域起こしをしている担当者の言葉は頼もしかった。

この方にはイベント後に色いろと質問させていただいたが、「なにもしなきゃ、なにも起こらない」から地域起こしをやるのだ、という話をしてくれ、なんだか私も元気をもらった気がした。

日本への一時帰国の時に訪れたいと思える場所がまた一つ増えた。三尾地区にはいつ行けるだろうか。

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