カナダへ避難したユダヤ人

日本に住んでいた時、カナダの市民権とスイスの市民権の2つを持っている友人に出会った。彼はスイスで生まれ育ったが、父親がカナダのケベック州で生まれたらしく、カナダの市民権も持っているのだ、と言っていた。

日本では許されていないが、ヨーロッパの多くの国やカナダでは二重国籍というか複数の国籍を所持すること(たまに四重国籍くらいの人もいる)が認められている。ということで世界には複数の市民権(パスポート)を持っている人がたくさんいるので、彼のケースはまったく珍しいことではない。でもEU内で労働の自由が認められているスイスパスポートとカナダパスポートの組み合わせなんて、羨ましいと思った。でも彼の家族の歴史について聞いた時、背筋が凍る思いがしたし、彼が2つの国籍を有することに対して安易に羨ましがったことを申し訳なく思った。

彼のユダヤ人のおじいさん家族はポーランドに住んでいたらしいが、ナチスドイツからの迫害を理由に南米に渡り、その後カナダケベック州に移り、そこで彼の父親が誕生した。その後、彼の父親はケベック州と同じくフランス語圏のスイスへ渡ったのだという。そしてスイス人の母親との間に生まれたのが私の友人だった。

この話を聞いた時から、カナダ、モントリオールには多くのユダヤ人が避難してきたことを知っていたが、今回、モントリオールにあるホロコースト博物館に行き、理解を深めることができた。

入口はあまり目立たないけれど、たくさんの人が見学していた。

わかったことは、当時カナダでは、モントリオール、トロント、ウィニペグの3都市でユダヤ人の受け入れをしていたということ。迫害される中、生きるためにカナダに渡った人たちの大変さは想像に余りある。しかもカナダに渡った後も、子どもたちは教育を受けることができなかったり、居住環境が悪かったせいで餓死者が出たり、病気やで多くの人が亡くなったらしい。

訪問したホロコースト博物館と同じ建物内には、Jewish Public Libraryという公共図書館もあり、中にはヘブライ語やロシア語で書かれた本も多く所蔵されていた(ロシアから渡ってきたユダヤ人もモントリオールには多いらしい)。図書館で働く人が言うには、公共図書館であっても、通常の図書館にはヘブライ語の本は所蔵していないので、この図書館の蔵書は貴重なのだと言う。

博物館の反対側にある図書館。こちらもあまり目立たない感じだ。

ヘブライ語は初めて目にしたけど、とても難しそうな独特な形をしていた。

建物の前にはイスラエルの国旗が掲げられており、ユダヤ人の祖先ヤコブはイスラエル出身だったのだと再認識したけれど、宗教を示す時に国旗という国を表すものを使用することに少し違和感を覚えた。でもそれだけイスラエルという国がユダヤ人にとって大切な場所なのだということを実感した。

入口に掲げられるイスラエルの国旗。

見学をし終わって思うのは、歴史を繰り返さないためにも、私たちは過去に起こった出来事をしっかり知り、考えることが必要なのだと思った。これは以前「間違いを繰り返さないためには」でも書いた通り、日系人の迫害の歴史と同じだと思う。

日本でもカナダでも、色いろな国の人と交流できて、過去の出来事を身近に感じる機会を得ている私はとても恵まれていると思う。学校で習った世界史はあまり好きではなかったけれど、その分を取り戻すべく、これから自習しようと思う。

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