人形浄瑠璃をトロントで

HACHIOJI KURUMA NINGYO PAPPET THEATERの告知を観た時、私は嬉しくなった。トロントでも観劇できるのだと。

私は学生の時にした日本一周中に偶然、徳島県の徳島県立阿波十郎兵衛屋敷で阿波人形浄瑠璃を観て感動してから、大阪にある国立文楽劇場で文楽を観劇するなど人形浄瑠璃の技術や伝統について興味があったのだった。

今回トロントで公演されたのは八王子車人形西川古柳座のみなさん。通常人形浄瑠璃では3人一組で立ちながら一体の人形を操るが、こちらはろくろ車と呼ばれる椅子に座りながら一人で一体を操る少し特別な方法で行われるものだ。

そもそも文楽は500年前に始まったもので、人形は現世とあの世を繋ぐものだと考えられており、何かがあると人形が身代わりになってくれると考えられていたそうだ。それゆえ、昔は神にささげるものだったという。

300年前に3人体制の人形浄瑠璃が確立したものの、幕末には東京で文楽文化は消滅してしまう。そこで一人でできないものかとろくろ車を開発し、一人でできる人形浄瑠璃を始めた。それが八王子車人形の起源らしい。

100年前には全国で200以上の人形浄瑠璃のグループが存在していたそうだが、現在では130のまでに減少している。

今回の公演では夕顔、葛の葉、釣女の3作品と、その合間に人形の仕組みを説明するパートがあった。

演目は日本語で行われるが、英語字幕が左右に出るので日本語がわからなくても字幕で十分楽しめたと思う。私は昔の表現で何を言っているのかわからなくなると、英語字幕を確認していた。英語字幕はかなり簡略化されていたけれど、わかりやすく多くの人の理解を助けたと思う。

第二部を待つみなさん

釣女の話は面白く、観客を沸かせていた。観客は日本人や日系人が多いのかと思いきや、全く日本とは関係のない人種の人たちも来ていた。そんな人達が楽しんでいる姿を見てなんだか嬉しくなったし、静かに鑑賞する日本人に対して、面白い場面では声を出して笑うカナダ人と日本の伝統芸能を一緒に鑑賞するのは新鮮でもあった。

文楽とは違い太夫と三味線は女性が務めていた

人形浄瑠璃は日本でもかなり下火で、広く人気があるとは言えない状況だと思うが、こうやって日本以外の土地で公演をし、多くの人に伝える活動をされている姿はとても心強く、応援していきたい気持ちになった。

人形浄瑠璃は、本当に人形が生きているのではないかと錯覚するほどリアルになめらかに動き、話が展開される。人形遣いとして一人前になるにはかなりの鍛錬が必要だと思う。そんな素晴らしい人形浄瑠璃という伝統をこれからも引き継ぎ守っていってほしいと願う。

人形浄瑠璃を観れて良かった。トロントまで来てくれた八王子車人形のみなさんに感謝。

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