情報を得ること

何かについて知りたいと思ったなら、元の情報に直接触れるに限る。2次情報や3次情報のような誰かを介した情報は、当然だが情報発信者の意図に関わらずすでにバイアスがかかっているし、最近では正確ではない情報がネット上に溢れていたりもするからだ。だから私はふらふら旅をするし、色いろな人に直接お会いして話を聞きたいと思う。

でもそうはいかない場合もある。飛行機でどこでも行けるこの世界にあっても、行く勇気が持てない場所があるからだ。私にとってそれは安全に不安のある場所。私は旅をする時に一番最初に安全かどうかを重視するので、紛争地域などに行くことはない。でも私が直接その地域を訪問しなくてもその地域について知ることができるのは、危険を顧みず現地で取材をしてくれるジャーナリストの方々のおかげだと思う。

2015年6月から2018年10月まで3年4カ月間拘束されていたジャーナリストの安田純平さん。解放のニュースを聞いてからずっと気になっていたので、一時帰国中にお話を聞きに行ってきた。

今回私が参加したのは≪安田純平さんと語る「ジャーナリストはなぜ危険地を取材するのか」≫という危険地報道を考えるジャーナリストの会が主催する講演会。

一番印象に残っているのは、「ジャーナリストはなぜ危険地を取材するのか」という問いの答えだ。安田さんを始め5人のジャーナリスト全員の答えは「好奇心から」とのこと。私にとってこの答えは意外だった。危険地で生活している人々について知ってほしいとか、助けるために、というような動機だろうと思っていたからだ。

でも話の中で、「現地に行く前から特定のことを伝えたい、という目的を持つことは不可能であり得ない。現地に行ってみて初めて、人に伝えたいことが見つかるのだ。」と言っていて大きく頷けた。そしてそのことがまさしくジャーナリストの仕事なのだと納得した。

また、フィリップ・メスメールさん(フランス「ル・モンド」東京特派員)がフランスのジャーナリストと日本のジャーナリストの境遇の違いについて話をしていたのも興味深かった。

フランスではジャーナリストの地位が高く、一般の人に情報を与えるジャーナリストの仕事は高く評価されているのだという。フランス人ジャーナリストが危険地で拘束され、フランス政府が身代金を支払い解放された時には、大統領が家族と空港で出迎え、解放を祝福するという。そしてその政府の行動に対して国民からの批判は全くない。

一方で、日本では安田さんが解放された時には身代金の支払いの有無(日本政府は支払っていないらしいが)に賛否があったり、安田さんが拘束されたのは”自己責任”だとし批判されることもあった。

同じ事例であってもフランスと日本では報道のされ方や国民の反応が全く異なる。彼は、日本では言論の自由がどれほど大切なことなのかについて教育の場で教えられていないので、ジャーナリストの仕事が歓迎されていないのだと持論を展開していた。一方でフランスはフランス革命を通じて啓蒙主義を学ぶので、一般の人に情報を提供するジャーナリストの仕事は尊敬に値する仕事だとみなされるという。

それゆえ、フランスでは政府を批判したメディアの方がよく売れるらしい。メディアが野党のような役割を果たし、政府を監視しているのだという。

日本のメディアとフランスのメディアは、同じメディアという名前にも関わらず、ずいぶん違うもののような印象を受ける。このような日本の国際比較はとても面白いし、もっと世界を知って日本を客観的に見ることが必要だと改めて考える良いきっかけになった。

講演会の様子。右から2人目が安田さん。

 

 

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