営業がやりたくて営業がやりたくて営業がやりたくて、就活では全部営業職を受けた。リーマンショック直後の2009年のことである。面接では大好きだった販売のバイトのことだけを話した。いくつかの会社から内定をもらったが、1社を除いては営業職採用だった。でも、営業スタイルなどを考慮した結果、その1社に入社を決めた。営業部に配属すると言ってくれた人事部を信じて。配属式ではそれはもう落胆した。営業部に配属されなかったのだ。入社後もいかに私が営業に向いているのかを事あるごとに人事部にメールし、上司にも訴えた。しかし辞めるまで私が営業部に異動することはなかった。
あの時、他の会社、例えば内定をもらっていた歩合制の体育会系の会社に入社していたら、今私はカナダで人事のコースなんて絶対に取っていないと思う。過去は変えられないし、営業配属にはならなかったけど、その会社ではいい経験をさせてもらえたと思っているので、今更不満を言うつもりはない。希望していた仕事ではなかったものの、やってみたらやりがいもあったし楽しめた。でも、私の意思とは異なるところで、私の人生の道筋は変えられてしまったというのは事実だった。
一方、カナダは完全な職種別採用なので、営業がやりたい人は営業職を受け、営業職としてのキャリアを積める。社内での職種間異動もない。自分の意思で仕事を選べるのだ。
日本人は意見を言ったり自己主張をすることが苦手な人が多いような気がする。それは自己主張をしたところで、自分の人生に関わることですら自分で決定できないという場面が存在することも理由の一つなのではないかと思う。自己主張をしても通らないことが分かっていれば、ほとんどの人は言うことをやめ、諦めるだろう。そして考えなくなる。そして主張したいことがなくなっていくのだ。
以前、日本で働いている外国人の友人に聞かれたことがある、なぜ日本人は仕事を楽しんでいないのか、同僚がお金のために働いていると言っていた、楽しんでいないからアイディアも出てこないしチームとしてマイナスなんだ、と。友人はエンジニアで、オタクだ。エンジニアとしての毎日を楽しんでいる。会社員でありながらこんなに仕事を楽しんでいる人を日本人ではなかなか見ないので、少しびっくりしたほどだ。
もしかしたら友人の同僚は、エンジニアとしてのキャリアではない違うキャリアを積みたかったのかもしれないな、と思った。
日本の会社の研修制度は素晴らしいと思う。でもそんな研修制度があるから誰でも人事部の思うがままに配属、異動できてしまう。素晴らしい制度も見方を変えると手放しでは褒められない。
私は新卒一括採用という概念のないカナダから、一人でも多くの就活生が希望の仕事ができる未来を手に入れることができることを願っている。日本の就活生に幸あれ。