偽装結婚は是か非か

トロントに来て一番衝撃を受けたこと。

【偽装結婚】

噂にはよく聞いていたけれど、実際の話として聞くとは思いもしなかった。言っていることが信じられず、自分の英語力を疑った。しかしそんな驚いている私などお構いなしに「内緒にしてね」と言いながら、とても嬉しそうに話してくれた。話したくて仕方がなかったようだった。

確かにカナダの永住権や国籍を持つことは、カナダに住む人にとってメリットしかない。大学の授業料は半額か3分の1になるし、仕事も見つけやすい。そしてなにより、ずっとカナダにいられる。貧しい自国の家族へ仕送りもできる。

相手にお金を払い書類にサインをして、政府のインタビューを受けるだけで、様ざまなメリットが享受できるのは魅力的なのだろう。

でも一方で、結婚はそんなものじゃないだろう、と思ってしまう自分もいる。最近、私はFacebookで幸せに満ち溢れた結婚報告や結婚生活の投稿をよく見かける。だからなおさら違和感を抱いてしまうのかもしれない。

でも、偽装結婚をして理想の生活を手に入れて幸せになるのも、結婚をして幸せになるのも、考えてみれば同じ幸せになる手段なのだな、と思う。

言うまでもなく法的な問題はあるけれど、私は一方的に知人を批判することはできない。それだけ知人は必死で、偽装結婚を通じてより良い生活を手にすることを求めているからだ。

トロントで生活をしていると様ざまな人生ドラマを聞く。それは日本に住んでいる時に聞く苦労話とは異次元のものだ。そんな話を聞く度にいつも考える。私にとって幸せとは何か、私は何を得るためにトロントにいるのだろうか、と。

偽装結婚について嬉しそうに話してくれた知人の幸せを、私は心から願っている。

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