ジャパニーズ スラング

「・・・ってエモいですよね。」

と登壇者が言い、私以外の観客は全員納得したような顔をしていた。「エモい」という言葉を理解していなかったのは私だけのようだった。

日本を離れて3年目だが、日本語のニュースサイトも本も読むし、日本語でネットサーフィンもするので、それほど新しい日本語に疎いという自覚はなかった。だがしかし、ついに私の知らない単語に出会ってしまったのである。母国日本で母国語である日本語で講演を聞いているのに、理解できないことがあるなんて!なんだか少しショックだった。

私は瞬時に、エモいとはなんだろうか、と考え始めた。

‐キモいに似ているけど、キモいではない

‐最後が「い」だから恐らく形容詞

‐キモいのようにきっと「エモ」がカタカナで、「い」がひらがな

‐「エモ」は何かの省略形

そして、こんなことを考え初めてしまった自分にかなりの違和感を覚えた。カナダで知らない単語に出会った時に考えることを日本語でしていたからである。今まで日本に住んでいて、日常会話で使用する単語の品詞など考えたことがあっただろうか、いや、全くない。思考の癖とは何とも面白い。

講演会が終わってからスマホで意味を検索してみる。だがしかし全然ピンとこない。日本語で解説が書かれているのに、意味が理解できるような、できないような微妙な理解しかできないのである。

英単語を覚える時に、意味を覚えるだけでなく、自分で文章の中で使えるようにならないと本当にその単語を理解したことにはならない、と聞いたことを、この「エモい」という単語を通じて思い出した。

私は「エモい」という単語を今度聞いた時には、きっと何となく意味を理解することをできるだろうが、自分でこの言葉を遣う時には不安になると思う。それは完全に理解をしていないからだ。

知らない日本語に出会い、英語に思いを巡らしたり、またその逆をしてみたり。私にとって外国語を学ぶことは、母国語を体系的に理解することを助けたり、母国語への興味を引き起こすものでもある。外国語を学ぶことは母国語以外の言語を習得する、ということ以外に、2度3度と美味しく面白いことである。

※浅草からのエモい景色

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です