幕が下がった時、とても穏やかに心が満たされている自分に気が付いた。20年ぶりくらいに観賞したバレエはとてもよかった。
カナダではホリデイシーズンになると毎年、カナダ国立バレエ団がくるみ割り人形の公演を行う。パンフレットによると、1995年から延べ1,104,248人が観賞しているらしい。ホリデイシーズンの伝統的な過ごし方の一つのようだ。
チケットの値段は席にもよるが50~183CAD(約4,160~15,228円)で安いものではないが、ほぼ全公演満席になるので、事前にチケットを購入する必要がある。
でも実はどんな公演でも公演当日にチケットを購入する方法が一つだけある。限定60席の立ち見チケット、12CAD(約1,000円)だ。これは当日の11時からチケットカウンターで一人2枚まで購入できる。優雅なバレエを立ち見で観賞するなんて邪道かなと思いながらも、試しにこのチケットを購入することにした。
チケットカウンターへ到着したのは、販売開始10分前の10時50分だったが、すでに列ができていた。19番目だったのでほっとする。
無事にチケットを購入できた。場所はRing 4の470という本当に本当の最後尾だった。そこから本当に見られるのか、と不安になりつつも他に選択肢はないので購入する。チケットには、「指定の場所から動かないことに同意する」と書かれており、承諾のためのイニシャルを書かされた。
会場は18時で上演開始は19時だったが、座席もないので直前に会場へ。立ち見席を確認して思わず笑ってしまった。手すりの下にちょこんと私の座席番号が書いてあった。一応手荷物を架けるフックがある。
舞台までは思っていたより離れていなかったし、小さな私の前に障害物がないことを確認して安心する。
バレエは始まったらあっという間だった。立っていることが辛いとかそんなことは考える暇もなく、終演した。
この公演日を選んだのは、くるみ割り人形役が日本人だったからだが、彼のバレエは本当に優雅で美しかった。詳しいプロフィールはHPで確認できるが、カナダ国立バレエ団のプリンシパルダンサー(ダンサーの最高ランク)は2015年から務めているらしい。私は彼とは何の接点もないけれど、同じカナダに住んでいる日本人がこうしてがんばっている姿をみると嬉しくなるし励まされる。
さて、最後にシアターの雰囲気だが、皆ドレスアップしていて華やかだった。立ち見席の私は言うまでもなくフラットシューズだが、ピンヒールでドレスを身に纏ったお姉さま方や、かわいいドレスを着た子どもがたくさんいた。普段カナダ人はお洒落をしないけれど、ここぞという時の気合いの入れ方は凄いな、と改めて思う。
カナダではこのようにバレエが格安になったり、オペラでは年齢によって半額になったり、映画では曜日によって半額になったりする。これは家計の経済状況に関わらず、多くの人が文化的活動をすることを助けているように思う。多くの人にやさしい、そんなカナダが私は好きなのだと再確認した。
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