VRという新しい言語学習の方法

私はトロントでほんの少し日本語教育に携わっていて、その研修や勉強会で時々国際交流基金トロントのオフィスへ行く。日本語教育についての知識はもちろん、私の英語学習のヒントをもらうこともよくあり、とても有意義な時間を過ごしている。

今回、VR(バーチャルリアリティ)を言語学習に活用するワークショップがあると聞いて、何のことだか全くピンとこなかった。でもピンときていないからこそ、なんだか出席しておいた方がよさそうな気がして申し込んだ。

結論から言うと、VRはこれから言語学習の一つの方法になる、ということだ。というかもうすでにVRは言語学習を含む様ざま教育分野で活用され始めている。

そもそもVRというのは特殊なゴーグルを付けて、他の空間にいるかのように錯覚するものだが、それを付けての言語学習のポイントとなるのは、没入感(immersiveness)、運動感覚的言語学習(kinesthetic language learning)、社会性VR(Social VR)である。

あたかもその場にいるような感覚で、身体を動かしながら、他者との関係を持ちながら学習する、とでも言おうか。

私が一番興味深く思ったのは、言語学習には身体を動かすことがとても有効である、ということだ。身体を動かしながらの言語学習では伝統的な方法での学習時と比べて一週間後の知識の定着率が高いという。しかも伝統的な学習方法で成果がでない人ほど成果がでるらしい。

なんだか中学生の時の私に教えてあげたかったな、なんて思っていたら、VRを活用した英語学習を仙台育英学園高校ではすでに実験的に実践しているという。VRはすでに教育現場に進出していたのだ。

ここまで読んで、VRなんて所詮ウソの空間でしょ、とこの研修を受ける前の私のように考えている人も多いような気がするので一応言っておくと、VRは本当にあたかもその場にいるような感覚になれるほど、驚くほどリアルである。

研修では6DoFのゴーグルを付けてVR体験をした。語学学習とは少し違うのだが、それは高層ビルの屋上からはみ出た板の上を歩くというもので、高所恐怖症の私は全然全く動けなかったのだ。もちろん現実世界では私は研修室にいるので、もし板を踏み外したとしても何も起こらない。でもなぜか私の脈拍はどんどん上がり、冷や汗をかき、私は全く動けなくなった。

これは全くの私の仮説だが、人間がそこをリアルな世界だと認識するために、VRには人間の性質を利用した仕掛けがあらかじめされているのではないかと思う。リアルすぎて少しショックを受けるほどだった。

最近では翻訳機能の進歩で言語学習は必要ない、と言う人もたまに見かけるけれど、言語を学ぶことは文化を学ぶことでもあるため、違う言語を使う人とコミュニケーションを取るには、翻訳機では不十分だと思うので、日本における外国語学習が最新テクノロジーを通じて進歩すればいいなと思っている。

VRでの言語学習の今後が楽しみである。

VR体験中のへっぴり腰の私と笑う講師の先生。お世話になっている先生に動画を撮られていた。恥ずかしい。

参考:留学はもういらない?「仙台育英学園高等学校」が米スタートアップimmerseの「対人VR英会話レッスン」を試験的に導入開始。教育機関としては世界初。(PR TIMES)

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