足立区出身であることはできることなら言いたくない、とずっと思っていたし、実際にあまり言わなかった。それは、足立区出身というと、「不良だったの?笑」と聞かれるのがお決まりのパターンだからだ。それに加えて、去年の秋あたりは「≪同性愛が広がれば足立区が滅びる≫って発言した区議がいる足立区ね(参照)」と言われたこともあり、悲しいというか残念というか申し訳ない気持ちになっていた。
先日、何の気なしに自宅ポストに投函されていた「あだち広報(3月25日号)」の紙面を見て、驚いた。そこにはこんな情報が載っていた。
驚いて少しネット検索してみると、その他にもLGBTQ関連の施策を打っていることがわかった。問題が起きてからのことをタイムラインにするとこんな感じだ。
2020年
- 9月25日:白石区議が同性愛が広がり足立区が滅びると発言
- 10月6日:鹿浜議長と区議会自民党がそれぞれ白石区議を呼んで厳重注意
- 10月20日:白石区議が謝罪し発言を撤回
- 12月1日:「あだちLGBT相談窓口」開設(リンク)
2021年
- 2月10日:「足立区パートナーシップ・ファミリーシップの宣誓の取扱いに関する要綱」制定
- 4月1日:「足立区パートナーシップ・ファミリーシップの宣誓の取扱いに関する要綱」施行
9月25日の問題発言から動きが出ている。報道によると、白石区議の問題発言があってから当事者との意見交換を行い、制度を導入することにしたのだと言う。世論が区政を動かした結果だと言える。
「足立区パートナーシップ・ファミリーシップの宣誓の取扱いに関する要綱」の制定を知らせる区のHPには以下のように書かれている。
紆余曲折ありましたが、問題は一議員の発言の枠を超えて、区や区民の認識まで問われる状況に発展したことが、今回の要綱制定につながったことは事実です。要綱が出来たからといって、これまで反対の立場をとっていた人が急に考えを変えていただけるとは思っていませんが、「足立区に住むのが怖い」と発言せざるを得なかった、性的指向や性自認に関して困難を抱える方々の思いに、区として少しでも寄り添えればと思ったのです。
引用:パートナーシップ・ファミリーシップ要綱を制定しました(公開日:2021年2月26日 更新日:2021年2月26日)リンク
白石区議の発言は本当に区民として残念だったが、この発言を区議個人の問題と捉えず、足立区として迅速に対応してくれたことに、区民としてとても嬉しく思うし、地元足立区を少し誇りに思うことができた。
でも考えてみると、そもそも政治・行政とは国民のためにあるわけで、これがあるべき姿なのかもしれない。この足立区の対応に驚くのではなく、こんな対応が当たり前の日本になってくれることを願う。
ただ、この件で少し残念なのは、このことについてあまり報道されていないことだ。事実、私もあだち広報の紙面を見るまで知らなかった。「足立区が滅びる」までのインパクトのない事例かもしれないが、4月1日の施行の時に少しでも取り上げられ足立区のイメージが上がることを期待している。
【参考】
- 同性愛差別の区議発言から、パートナーシップ制度導入。足立区長が語る反省と後悔(HUFF POST)リンク
- 性的少数者カップルの子も家族に 区議が差別発言の足立(朝日新聞)リンク
- 「足立区滅びる」発言を謝罪、撤回へ LGBT問題発言の自民区議に抗議250件(東京新聞)リンク