現代アレンジのオペラ「ヘンゼルとグレーテル」

劇場で鑑賞するオペラ2回目はヘンゼルとグレーテル(Hänsel und Gretel)。作曲はドイツ人のエンゲルベルト・フンパーディンク、初演は18931223日ドイツのヴァイマル。初演がクリスマスの直前だということもあってか、劇中にはクリスマスと思われる描写がある。グリム童話が原作ではあるものの、オペラではハッピーエンドで終わるように変更されているので安心して鑑賞できた。

グリム童話が原作なのに、カナダオペラカンパニー(COCのプロモーション動画を見ると、そこには現代的な衣装のヘンゼルとグレーテルがいて(グレーテルは虹色のスパッツを履いていた)、現代的にアレンジされていることが一目でわかったので、アレンジも含めて鑑賞を楽しみにしていた。

なんとオペラは現代のトロントの街並みが舞台(スクリーン)に映し出されるところから始まった。雰囲気はどう考えても現代劇である。ヘンゼルとグレーテルの話はトロントにあるアパートの中で展開しているという設定のようで、途中でプロジェクションマッピングなど現代的な演出を取り入れながら話は展開していった。

オペラを鑑賞する度に思うことではあるけれど、よくあんなにも不安定な体勢であそこまで綺麗な歌声が出せるものだと感心する。今回のヘンゼルとグレーテルは子供の役ということもあって、前かがみになりながら、しゃがみながらも素敵な歌声を聞かせてくれた。

その一方で、現代アレンジのため舞台セットはアパートなのに、オペラの歌詞はもちろん原曲通りなので、森の中を彷徨うなどの場面では、歌詞と舞台上のセットがかみ合っておらずひどく混乱してしまった。鑑賞する前に物語は予習していたので、なんとなく物語のストーリーを追うことはできたが、もし全く知らない話だったとしたら、もっと混乱していただろうと思う。

鑑賞後に、今回のオペラはきっと私のオペラ鑑賞の経験不足で理解できなかったのだろうと思い少し落ち込んだが、ネットで調べてみるとそうではないことがわかって少し安心した。複数の媒体で「演出がわかりにくく観客を混乱させる」などと批評されており、私と同じ場面で混乱していたことがわかったからだ。

クラシックなオペラを現代アレンジすることは、かなり難しいのだということを理解した。舞台セットや登場人物の設定を現代にしたとしても歌の歌詞を変更することができないからだ。

今まで私が観た2本のオペラも、そして今回のものも、演出家が違えば全く違うものになるのだろう。オペラは演出家次第で様ざまに変化できるのだということを身をもって実感した。

友人が、どんなオペラが好きかわからないから、とりあえず今シーズン全公演観れば良い、と言った意味が少しずつわかってきたような気がする。そして、オペラの魅力に魅かれ長い間定期的にオペラに通うオペラファンの気持ちも、これから理解できそうな気がしている。何事も経験である。

参考

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