コロナウイルスと差別と情報

日本のコロナウイルス関連の報道を見ると心配になるが、トロントに住んでいる私はあまり実感できずにいた。それでも今朝起きてスマホのポップアップ通知に全国の学校閉鎖の文字を見て、事態の深刻さを再確認した。(日本の学校閉鎖についてはカナダCBCのポッドキャストでも話されていた。)

カナダではこの一週間くらいでカナダ国内のコロナウイルス関連の報道が増えてきたように思う。感染者が国内で複数確認され始めているからである。政府のHPによると、現在(202022718時)ではオンタリオ州6名、ブリティッシュコロンビア州7名の感染が確認されているらしい。さらに今日はカナダ国内(オンタリオ州)で初めて人から人への感染が確認されたのだそうで、報道がこれからますます増えそうな気がしている。

そんなあまりコロナウイルスについて考える機会がなかった私だけれど、先週末、思わぬ場面に遭遇した。ヨーロッパやアメリカで起きているといわれているアジア人差別である。実はカナダ国内でもあると聞いてはいたが、私は遭遇したことがなかったので、特に気にしたことはなかった。

先週末、ダウンタウンの路面電車の車内で、一人の白人男性がマスクをしていた中国系と思われるおじいさんを罵り始めた。「コロナウイルスがここにいるぞ!(おじいさんを触って)あぁ!オレにもコロナウイルスが付いちゃった!」車内には戸惑いと驚きの空気が流れた。大声を上げているのはどう考えても正気には見えない男で、匂いからしてドラッグ常用者と思われた。周りの人が路面電車の運転手に報告し、運転手から注意され、一度男は静かになったが、すぐにまたおじいさんを大声で罵り始めた。周りの乗客がそれは人種差別だから止めるように、と注意するも男は止まらない。結局、ドライバーが路面電車を停車して警察を呼ぶことに。警察が来る前に男は路面電車から下車したため、路面電車は再び動き出したが、騒動は15分くらい続いていたと思う。

同じアジア人である私は、私にも何か言ってくるのではないかと少し不安だったし、ベビーカーを引いていたアジア系の親子は危険を察知して早々に路面電車から下車して身を守っていた。

この問題の男が降りてから、周りの乗客は、近くにシェルター(ホームレスの一時宿泊所)があるからそこの人だろうと話していた。カナダの路面電車では無賃乗車が簡単にできてしまうので、たまに車内に怪しい人が紛れ込むのだ。

トロントでは普段あまり差別をされることもなく平和に生活しているが、こうして差別が起こることもあるのだな、と初めての体験をした。でも、騒いでいた男はいたが、周りの人たちが男に注意したりするなど、差別されているおじいさんを守っていたので、そこはさすがトロントだなと思った。トロントの一般市民の正義感に触れることができて少し嬉しかったし安心した。もし日本で同じことが起こったら、その場に居合わせた人は差別を受けている人を助けることができるだろうか。

このトロントで遭遇した男は普段どんな人なのかは知らないが、人は大きな不安を抱えると判断能力が低下したり、差別的な思想を持ってしまったり、差別的な行動を取ってしまうこともあるような気がする。そしてそれを回避する手段の一つは、正しい情報を入手して、正しく状況を把握して、必要以上に不安にならないことだと思う。

私はファクトチェック・イニシアティブ(FIJというファクトチェックを推進するNPOの活動に少し参加させてもらっていて、このコロナウイルス関連の海外の事例の翻訳作業などのお手伝いを行っている。

もし怪しい、本当かわからない情報があればこちらのサイトを確認してみてはどうでしょう。不要な心配、偽情報に振り回されていることに気が付くかもしれません。

新型コロナウイルス特設サイト (ファクトチェック・イニシアティブ)

新型コロナを「正しく怖がるため」。世界中のあやしい情報、ファクトチェックが一覧に/2020.2.2(Buzzfeed. News)

 

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