上海図書館と中国政府

いつも通り上海でも図書館へ行く。上海にはたくさんの図書館があるので、どの図書館へ行くか迷ったけれど、中国で二番目に大きいらしい上海図書館へ行くことにした。この図書館は上海图书馆站というすばり図書館の名前の駅の真上に立っている。

とても大きくそびえ立つ図書館。これは期待できそうな気がする。入る前からわくわくしてくる。

入口で恒例の荷物検査。入口を過ぎると案内板がある。5つのフロアからなるらしい。横にはスタバがあり、くつろいでいる人も。

中国語が全くわからないので、外国語の本があるらしい4階に行ってみることにした。フロアの中に入るには図書カードが必要なので、入口付近で図書カードを作成することに。作成にはパスポート番号や住所などの情報をシステム入力する必要があった。本を借りる場合はデポジットでいくらか入金する必要があるようだったが、貸出用のカードでなければ無料で作成できる。システムは英語も選択できたので、難なく作成できた。

手前の端末で情報入力してから奥のカウンターへ。

一回のためにカードを作成してしまった。

私は色いろな国の図書館に行っているけれど、閲覧するだけなのに図書カードを作成しなくてはいけなくて、しかも作成時にここまで個人情報を入力したことは今までなかった。ましては借りるのにお金をデポジットとして入金するなんてことは初めて聞いた。中国政府に厳重に管理されているのだろうか。なんだか少しこわい。

4階の日本語書籍コーナーにはたくさんの蔵書があった。ここまでたくさんの日本語の本が揃っている日本国外の現地図書館を私は未だかつて見たことがなかった。しかも恐らくすべては寄贈本ではなく購入本である。以前ブログでも書いた通り、アメリカなどの公共図書館では日本語書籍は寄贈本であることが多いのだが、ここはそうではないようだった。なぜそう思うのかといえば、蔵書の分野に偏りがあるように思えたからだ。中国の政治家について書かれた本や、レーニン、マルクスなどの思想を取り上げた本、など中国関連の本がところ狭しと並んでいたのだ。私はこの分野の専門家には詳しくないが、もしかしたら著者の思想も偏っている可能性があるかもしれない。

日本語書籍のカテゴリにマルクスやレーニンが単独であるという違和感。

習近平について書かれている本。

同じフロアには、専門雑誌が並んでいた。ここのレイアウトはとてもユニークで、言語に関係なくカテゴリーで分類されていた。多くの図書館では言語ごとに分類するので、他言語の同じ分野の書籍を同じ書架から探すことはできないのが通常なだけに、面白かった。日本人でも知らないような日本語で書かれた専門雑誌が置いてあり興味深かった。

この本棚は日本語が多いが、一部ロシア語のものが混ざっている。

書架の間にはたくさんの机と椅子があるのだが、そこでは本当にたくさんの人たちが勉強していた。みんな真剣そのもので、中国の競争社会というか、力を見た気がした。

どの階も満席である。

中国語の書籍はどのように分類され並べられているのかかなり興味があったが、中国語がわからないので確認できなかったのが残念である。でも本は溢れており、一部本棚に並んでいないものもあった。

作成した図書カードを見て改めて思うのは、中国には日本図書館協会が作成したような「図書館の自由に関する宣言」や「図書館員の倫理綱領」のようなものはないのだろうな、ということである。「図書館の自由に関する宣言」では日本では選書の際に思想の偏ったものだけを収集することを善しとしていないし、「図書館員の倫理綱領」では国民の読書の自由を保証するために個人名や貸出記録を漏らすことを禁止している。この図書館では書架を見れば蔵書は偏っているし、利用カード作成時に多くの個人情報を入力するところからも、日本のような規則はなさそうである。図書館を見てもまた、以前書いたような中国の監視社会の一端を感じずにはいられず、ますます中国政府の力を実感するのであった。

私がこの日に上海図書館に行って、4階でふらふらしていたこともきっと中国政府は調べればわかってしまうのだろうな、と思うと、別に悪いことなんてしていないけれどなんだか複雑な気分になるのであった。

ウォーターサーバーがところどころにあった。

図書館の中庭。

 

※図書館が好きすぎるのでカテゴリに図書館を追加しました!ブログを始める前に訪れた図書館もたくさんあるので、これからさかのぼって更新していく予定。

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