職探しに絶望していた私だったけれど、絶望していられる期間は限られていた。生きていくにはお金が必要なのだ。もう嫌で嫌で仕方がなかったけれど、細々と就職活動を始めた。
私にとっての理想の仕事というものはあったけれど、今は高望みしないと決めた。とりあえず最初の仕事をトロントで決めることだけを考えた。
私の武器は何だろうと考えたけれど、日本語以外に思い付かなかったので、英語をベースに使う仕事でかつ日本語が武器になる仕事を探すことにした。私の英語力はネイティブには劣るしカナダでの職歴がないのがマイナスになる。カナダの企業文化も知らない。でも日本語をネイティブ並みに話せる英語ネイティブはほとんどいないと思ったからだ。でも日系企業は嫌なので、日系企業は候補から除外。あとは絶対に最低時給では働かない、と決めた。実は時給換算すると最低時給やそれ以下のフルタイムの仕事も少なくないと周りから聞いていたからだ。
でもそんな求人はそうそうない。結局2週間くらいのうちに5社にカバーレターとレジュメを送った。そして幸運にもその中の一つに内定したのだった。
絶望から始まったカナダでの職探しに書いた通り、100社200社とレジュメを送らないととアドバイスする人もいたけれど、そんなことはせずに、一社一社レジュメやカバーレターを時間を使って丁寧に書き変えて提出すれば、会社は返事をくれることがわかった。私はレジュメを送った5社のうち、4社からは書類通過の連絡をもらえた。以前転職エージェントから「あなたの経歴では紹介できる仕事はありません」と言われた私だったので、これには驚いた。
その後は面接の練習である。友人相手に予想される質問に答える練習をした。そんな周りからのサポートもあって内定したのであった。
選考途中の企業もあったけれど、最終的には一番最初に決まった会社に入社することにした。入社を決めた理由は複数あるが、一番は、トロントオフィスが私の入社と同時にオープンするというところだった。会社は北米、ヨーロッパ、アジア、中東にオフィスがあるが、今回新しくトロントオフィスをオープンするにあたり従業員を探していたのだった。0から1を作ること、組織作りに興味がある私なので、新しいオフィスのオープンと同時に働けるのはとても良い話に感じられた。それが決め手で入社した。
トロントオフィスには3ヶ月前に入社したマネージャーと、私と同じ入社日の同僚たち。座学研修はNYオフィスとスカイプで繋いで受け、その後はヨーロッパから研修担当者が来てくれ、実務の一部について教えてくれるなど、面白い研修環境だった。時差もあるので色いろやりにくいこともあるけれど、仕事をする仲間は必ずしも同じ国、同じ部屋にいなくても良いのだ、ということに気が付かされた。
日本にいたらあまりできない経験をする機会をいただいていることに感謝しつつ、明日もまた朝から働くのである。