なぜセックスを題材にした映画を撮ったのですか

トロントは東京に比べて娯楽が少ないように思う。でも、数少ない娯楽を多くの人と共有する工夫がされているような気がする。

そんなトロントで少し前に映画館での無料映画上映と監督のトークショーがあった。

 

その映画はLe Declin de l’empire americainという1986年にカナダのケベック州(フランス語圏)で作られた全編フランス語の映画だった。私が生まれた年にカナダではどんな映画が撮られたのだろうと楽しみにしていた。

ちなみに、この作品は1986年のトロント国際映画祭で観客賞を受賞している。(ちなみに2016年はLA LA LAND(ラ・ラ・ランド)が受賞。)

 

が、しかし

映画は終始男女4人がセックスに関する話をしているか、冗談やウソを言い合っているか、もしくはセックスをしているかという映画で、何も知らずに観た私はひどく困惑した。そしてびっくりするのは、男性の局部が堂々とスクリーンに映っていること。ポルノ映画ではないのだから配慮とかしないのかしら…などと考えたけれど、そこにはしっかり映っていた。

 

全編フランス語なので、私は英語字幕を必死に追うしかなく、しかもセックスに関する単語の知識のない(なんとなくそれがセックスに関する単語なのだということはわかるのだけど)私は、映画の内容もそうだが、完全に理解できずにもやもやする結果となった。

 

でも、上映後の監督Denys Arcandの話がなんとも興味深かった。観客の一人が「なぜこの映画を撮ろうと思ったのか」と質問した時に「これ以外に題材が思いつかなったんだ。カナダは第一次世界大戦も第二次世界大戦も、革命も経験していないから、共通の話題がないんだよ。だから日常的なことを撮るしかなかったんだ。」と。確かに言われてみれば日本には戦争を題材にした映画が結構あるけれど、それは日本だから起こり得るわけで、カナダではそうはならないのだなぁと妙に納得した。まぁだからと言ってこのような映画も珍しいとは思うけれど。

 

今回は映画鑑賞だけではなく監督の話が聞けて本当に良かったと思う。監督のこの話がなければただの変な映画を観た、くらいの印象しか残らなかったが、作品の背景を知ることで少しこの映画の印象が変わった。

 

帰り道、大きな戦争も革命も経験していないからこそ、今の移民国家のカナダになったのか、移民国家だからこそ大きな戦争や革命が起こらなかったのか、どちらだろうかと思ったけれど、それはどちらもあり得そうだな、とぼんやり考えた。

 

※写真は司会進行(左)、監督(中央)、通訳(右)だったのだが、監督(第一言語はフランス語)が英語を普通に話していたので、通訳者は一度も通訳せずに終わる。監督は通訳者に対して、通訳の機会がなくてごめんね、と謝ってしまう、なんともゆるいトークショーだった。

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