トロントの冬は長い。4月中旬になってさえ、未だに霰が降り、雪のような雨のような天気が続いている。インスタのタイムラインはそんな天気のポストで溢れている。春はまだ来ないのかと皆が首を長くして待っている。
私もまたその中の一人で、退屈な冬のような天気でも楽しめる屋内の楽しいイベントを探す。それしかトロントを楽しむ手段がないのだ。
週末はトロント唯一の酒蔵izumiのツアーへ。ツアーを知ってからというもの、ずっと来たみたかったのだけど、予約が必要ということもあってなかなか二の足を踏んでいたが、ついに参加することにした。
ツアーと言ってはいるものの、酒蔵の中には入れずちょっとしたスペースで酒蔵の歴史や日本酒の造り方の説明を聞くというものだったが、十分楽しめた。サンプル4種類付きで一人15ドル。メニューを見るとサンプルは一杯3~4ドルなので、ほぼお酒代でツアーに参加できたという計算になる。かなりお得だ。
説明はフィリピン系カナダ人の方から。お酒にはかなり詳しく、参加者からの質問にもどんどん答えてくれた。説明の中で一番驚いたのは、この酒蔵はエストニア系カナダ人で元銀行員のオーナーが始めた酒蔵だということ、日本酒造りのレクチャーを長野にある酒蔵から受けて始めたということだった。15人の従業員の中には日本人もいるけれど、そうでない従業員も多いという。
また、悪天候だったのでツアーは4人と少人数だったのだが、日本人は私一人。日本酒の話を日本人以外の人とするのはなんだか新鮮だった。
この酒蔵では、山田錦を使った大吟醸を造る計画を立てていたり、オタワ(トロントから東へ450km)のお店にも近々お酒を卸すことになっていたり、なかなか精力的に活動しているようだった。
ツアーが終わってから、最近私の日本的な活動に巻き込まれている非日本人の友人に、「トロントの日本的な場所って日本人が全然関わっていないんだね」と言われてはっとした。そうなのだ、こんな酒蔵という日本的な場所でさえ日本人はおろか日系人の経営ではない。
少し前には、Tsujiri(辻利)というトロントで人気のカフェで抹茶ソフトクリームを食べたが、ここは中国系のオーナーなのだそうだ。京都の会社からライセンスを取得してフランチャイズとしてオープンしたのだと噂で聞いた。最近、2号店の2階部分を改装してカフェエリアを拡大したTsujiri。大人気である。
もちろん、トロントで日本的なビジネスを日本人がしている例はたくさんあるけれど、そうでないお店も目立つ。日本人の商売下手な感じ?が少し垣間見れるような気もする。というか日本人は日本人としてトロントで生活するより、トロントに溶け込もうとする傾向があるような気がする。国民性だろうか。
日本にはまだまだ日本人が海外に紹介するべき文化や物があるのかもしれない。日本人には普通すぎてなかなか見つけるのが難しいのかもしれないけれど、トロントに住む日本人、もっとがんばれ、と自分のことを棚に上げて心の中で思うのだった。
前回のizumi訪問記事はこちら(Torontoクリスマスマーケットで熱燗)