私は温かい室内でなんとも言えない寒気に襲われていた。鑑賞後もなんだかすっきりしなかったので、少し遠くの地下鉄駅まで歩いて気持ちを落ち着かせた。
この日、私はCanadian Labour International Film Festivalで映画を鑑賞した。Carlton Cinemaで行われたこの映画祭では2日間かけて労働者に関する13本のショートムービーを見ることができ、私は2日目の第一回目の上映会(4本の映画を鑑賞することができる)に参加した。ドネーションは歓迎されるが入場料は無料、途中の出入りも基本的に自由の映画祭だった。
上映が始まる前の主催者によるスピーチではこの映画祭は11年目で今年は国内33か所で行われているということ、上映会を企画したい人が本部に問い合わせて企画するので、企画したい人がいたら本部に連絡してみたら良い、と言っていた。なんだかとてもカナダらしい運営形態だなと思う。お金のためではなく、自分が良いと思うものをシェアしたい、誰かのために何かしたい、という意識なのだと思う。
上記フライヤーの中段4本を鑑賞した。労働者、特に女性や移民などの弱い立場の人の労働環境や置かれた不利な状況については日々報道されているし実感しているので、それほど驚くことはなかった。(驚かないということは、この状況が普通になってしまっているということでもあるので、それはそれでとても大きな問題であるのだが。)寒気を感じたのは最後に上映されたTown of Windowsである。これはゼネラル・エレクトリックのカナダのオンタリオ州にあった工場でのアスベストなどの化学物質による健康被害問題を扱ったもので、未だに解決していないものだ。
私はこの問題について全く知らなかったし、現在決着が付いていないということと、映画を見る限りでは今後すぐには解決しそうにないことに驚きと憤りとやるせなさでいっぱいになった。
この約1時間の映画はカナダ国内からであればCBCのサイトで無料で観ることができるし、これに関するWEB記事もいくつか出ているので気になる方は直接確認してもらいたい。
この映画を見ながら私はあることを思い出していた。日本での化学物質による健康被害の問題である。最近お世話になっている元NHKでジャーナリストの立岩陽一郎さんが取材されている化学物質の脅威シリーズを読んだばかりだったのだ。このシリーズについて立岩さんと話した時に、カナダにも似たようなことが起こっていると思うと言われたが、カナダに限ってそんなことがあるのだろうかと調べもせずに思ってしまったのだが、本当に起こっていた。しかもとても大規模だった。
大して調査や検査をせずに化学物質を使うことを決め、その後に労働者に健康被害が出てきてもそれを隠ぺいしようとしたり、何かと言い訳をして責任を取らない企業。そして何も知らずに現場作業を続け健康に異常をきたす労働者。なんだかやりきれない。
このようなことが起きないのが一番良いのだが、そう上手くはいかないと思われるので、今回観たような映画を撮影する映画監督や、立岩さんのように取材し発表するジャーナリストが社会には必要なのだと改めて思った。
これらの映画を鑑賞できてよかった。今回の映画祭で上映された映画の中にはWEBで無料公開されているものもあるので後で観ようと思う。
―――上映映画一覧。リンクのあるものは関連ページに飛べます。―――
- Women at the Bargaining Table
- Azadeh
- The Stain
- Councilwoman
- The Glasgow Women Strike
- 24-hour Workday
- Do Not Ask For Your Way
- Town of Windows
- A Radiant Sphere
- Zero
- Rethabile’s Story
- A Model Employee
- Don’t Give up Your Voice
※個々の映画についての説明はこちら