用事があってケベック州モントリオールに行ってきた。トロントからバスに揺られること6時間。距離にして540km、そんなに遠くはないカナダの経済規模第2の都市だけど、到着した時にはカナダではないどこか別の国に来たような気分だった。
というのもモントリオールはフランス語圏なのだ。駅の名前はもちろん、道路標識もすべてフランス語。駅の場所を聞きたいのに、駅の名前が発音できないというどうしようもない事態に陥った。レストランやカフェでは英語のメニューが用意されている場合もあるけれど、そうでないところに入ってしまうとフランス語をなんとなく解読するか、店員さんに説明してもらうしかない。英語を話せる店員さんもいるが、フランス語なまりの英語のようなものしか話せない店員さんに当たってしまうとなかなか大変だ。
初日には、道路標識と駅の表示に惑わされ(駅までの案内がいきなり消えたりする)、かつ携帯電話のデータ通信がケベック州でサポート対象外だったようでGooglemapも使えず(カナダの携帯電話会社はカナダ全土をカバーしているとは限らないのだ)、待ち合わせに大幅に遅れてしまった。でも5日間の滞在最終日に近づくにつれ、なんとなく慣れた。
とはいえ、フランス語を全く話せない私は終始英語で生活していた。今さらながら英語は便利だと再実感したのだった。モントリオールの街中で日本語は全く聞かなかったけれど、英語はところどころで耳にした。こんな時、世界の共通語は英語なのだと実感する。
ところでケベック州がフランス語圏なのは、昔フランスの植民地だったからである。ちなみにトロントの位置するオンタリオ州はイギリスの植民地だったので英語が話されるようになった。フレンチ・インディアン戦争でイギリス軍がフランス軍に負けていたら、今トロントでもフランス語が話されていたのだろうか。そうしたら私はトロントには来ていないだろうな、と思うと不思議な気分だ。
ケベック州は1995年にカナダから独立するための住民投票で賛成49%、反対51%の僅差で独立を断念している。でもモントリオールに住んでいる知人からは、今の人は独立しなくてよかったと思っていると思う、と聞いたので今後の独立はなさそうである。ちなみに、州政府によって1970年代のフランス文化促進策が取られた時に、金融保険業などの多くの企業の本社がモントリオールからトロントに移転したらしい。フランス語を守るために失ったものも多そうである。
実は私のモントリオール訪問は9年前に続き、2回目だった。正直、9年前は何も印象に残らない都市だったけど、今回トロントと比較することができるようになったので、興味深い滞在になった。ちょっとこれからモントリオールとトロントの違いについて書いていきたいと思う。