眠い目をこすりつつ深夜2時から3時のウェビナーに参加。オンラインで世界のどこからでも参加できるのは助かるけれど、時差問題は避けられない。
参加したのはカナダのMediaSmartsというNPO法人主催のもの。MediaSmartsは子どもや青少年が、積極的に情報に精通したデジタル市民としてメディアに関わるための批判的思考力を身につけることをミッションとしている団体で、1996年からカナダの家庭・学校・コミュニティ向けに、デジタルおよびメディアリテラシープログラムやリソース開発を行っている。
スポンサーには、TELUS(カナダの大手通信会社)、cira (The Canadian Internet Registration Authorityカナダインターネット登録局)、Bell(カナダの大手通信会社)、Facebook、Googleなどの大企業が名を連ねている。
毎年、MediaSmartsとCanadian Teachers Federation(カナダ教師連盟)の主催でメディアリテラシーウイークという催しを行っていて、メディアリテラシーについて、情報の取り扱いについて、誤情報の見分け方についてなどを教えている。昨年までは首都のオタワで行われていたが、今年は10月26~30日にオンライン開催の予定で、今回のウェビナーはメディアリテラシーウイークの前段として開催されたものだった。
ウェビナーのタイトルはBreak the Fake: How to Tell What’s True Online。タイトルから、ファクトチェックの手法についてだろうと予想はしていたが、それをどのように説明するのか興味があったので参加した。Zoomを使って行われ、録音している関係なのか、参加者はテキストでのみコメントできる方式だった。コメントをみる限り、参加者はファクトチェックに詳しくない現役の学校の先生方が多かった印象だ。
なぜ現役の学校の先生方がファクトチェックの手法について学んでいるのか、それは授業で生徒たちにメディアリテラシーを教える立場にあるからだ。
カナダでは州ごとに教育制度が異なる。オンタリオ州では1987年に世界ではじめて「国語」(英語)のカリキュラムにメディアリテラシーを取り入れた。90年代のはじめには各州で教師を中心にメディアリテラシー推進団体が結成。現在では小学校から高校までのカリキュラムにメディア教育が組み込まれている(*)。実はカナダのメディア教育には歴史があるのだ。
講義を一通り聴いた先生方は、まず、どのように授業の中で教えたら良いのか全く見当もついておらず、困っているような印象を受けた。講師でMediaSmartsの教育ディレクターであるMatthew Johnson氏は、まず先生自身が理解することが必要で、それを生徒の学年に合わせてアレンジすることが大切だ、と話した。そしてMediaSmartsのサイトにある資料を参考にするように、と案内していた。
学校のカリキュラムの中でファクトチェックをはじめとするメディア教育が行われることは、とても有意義であると思うし、今後ますます必要になってくるだろうと思う。自分の知らないことを学びつつ、生徒に教える立場の先生方は大変だろうと想像するが、私は遠い日本からエールを送りたいと思う。
参考:*菅谷明子「メディア・リテラシー」岩波書店,2000年