日本時間9月30日10時、アメリカ大統領選の第1回目のディベートが行われた。日ごろファクトチェックの仕事をしている私は楽しみにしていた。アメリカではライブファクトチェックが行われるからだ。過去にもやっていたらしいが、私が確認するのは今回が初めてだった。
私が仕事をしているFIJとも協力関係にあるポリティファクト(Politifact)は米メディアWRALの中継にライブでファクトチェックの内容を字幕で載せた。ディベート終了後にwralのサイトを確認すると全部字幕に載ったかはわからないが、17のチェック済みの発言が確認できた。
ディベート中には基本的に【LIVE FACT CHECKS FROM WRAL AND POLITIFACT WILL APPEAR HERE THROUGHOUT THE DEBATE(WRALとPOLITIFACTによるライブファクトチェックは、討論会を通してここに表示されます)】と書かれたものになっており、チェックした結果は以下のように表示される。
このディベートは各国メディアでライブ中継される(日本でも同時通訳付きで報道されていた)。各メディアではディベート前に有識者やレポーターがそれぞれコメントをして独自色を出しているが、英語メディアであれば一度ディベートが始まってしまえば基本的にどのメディアを視聴しても同じものを見ることになる。
そんな中、ライブでファクトチェックをしていることを全面に押し出している、ということはこれが視聴者獲得のための差別化につながるからなのだと想像する。そしてこのディベートで誤った情報が飛び交うであることが広く予想されている、ということでもあるのだろう。
ライブファクトチェックとはどのような仕掛けになっているのだろうか、と思ったが、チェックしたリストにあったものは一番古いもので2019年3月12日公開のもので、一番新しいもので2020年9月28日のものだった。つまり、LIVE FACT CHECKSと言い画面上で結果を表示させてはいるが、ファクトチェック自体は過去のものだ。ファクトチェックは適切なプロセスを踏めば難しいことではないが、それなりに時間のかかる作業なので、納得した。
今に始まったことではないが、過去に正しくないと指摘されていることを、大統領選のディベートという極めて公の場で繰り返し発言することに怒りと悲しさを覚える。嘘だと知っていて嘘をついているのだ。なんと悪質なことか。(スクリーンショットはあえてバイデン候補のものにしたが、トランプ大統領のものは言うまでもなく沢山ある。)
他の複数のメディアでもライブファクトチェックをしていたようなので、それはまた次回に書きたいと思う。
※ポリティファクトでは上記ディベート終了後の深夜、ディベートで出た発言を新たにファクトチェックし、サイトで公開している。