電車に乗ってモスバーガーを目指す。モスバーガーは近所にあるのでなんだか少し変な気分だ。到着したのは大崎店。運営元の株式会社モスフードサービスの本社と同じビルにある店舗だ。ここでは少し変わった接客を受けることができる。
私が来店した時に接客をしてくれたのは、まやちゃん。やりとりはOriHimeというロボットを介して行われる。身体が不自由なまやちゃんは兵庫県の自宅から接客をしているらしい。このOriHimeは株式会社オリィ研究所の制作で、今は大崎店で試験的に運用されている。
モスフードサービスのニュースリリースにはこの取り組みについて、以下のように説明している。
当社では「人間貢献・社会貢献」の経営理念のも と、SDGs の取り組みを強化しています。今回、パイ ロットとして身体に障がいのある方とともにリモー トレジの実験を行い、17 の目標のうち「⑧働きがい も経済成長も」⑨「産業と技術革新の基盤をつくろう」⑩「人や国の不平等をなくそう」の 3 つ の目標を通じて社会貢献を進めます。リモート環境でできる業務を生み出すことで、社会に貢献 できるチェーンを目指します。
モスバーガーのこの取り組みは素晴らしいし、その様子を見てみたいと思って来店したが、実際に接客を受けてみて、身体に障がいのある方の支援以上に良い効果があるのではと感じた。
まず、客である私が楽しかった。通常ファストフードチェーン店での接客は忙しいためそっけないことが多い。これは仕方のないことだが、まやちゃんは違う。接客に専念できるので、色いろ話しかけてくれ、会話を楽しむことができる。メニューを決めかねている私に「どんな気分ですか、おなかはすいていますか」などと聞いてくれ、雑談をしながら一緒に選んでくれる。トロントではよくあることだが東京では珍しい。
私以外のお客さんも楽しんでいる様子だった。常連と思われるサラリーマンと談笑したり、初見と思われる女性には手作りと思われるマスクを褒めたり、天気の話(兵庫にいるはずなのに東京の天気を調べているのだろうか?)をしたり、私以外のお客さんも楽しそうに会話をしていた。
その様子は、直接人間が接客するより、人間らしさを感じた。
でもこれはまやちゃんだからできることのような気もする。私たち客はまやちゃんの声は聞こえるが顔は見えない。彼女の声には感情が乗っていて、笑顔で話しかけてくれているのだということを想像できるが、声で感情を表現できない人はもしかしたら難しいのかもしれない。
まやちゃんの明るく気持ちの良い接客を受けながら、接客に限らず、身体の不自由な方がそれぞれの個性を生かしてもっと社会参加できるような仕組みが確立されれば良いと思ったし、そんな未来が近い将来実現するのではと希望が持て、少し嬉しくなった。
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