自由党のトルドー首相が再選を果たした。ただ、単独過半数には届かなかったので、政権運営が難しくなることは必至である。それでも選挙直前の世論調査では野党第一党の労働党とほとんどポイントが変わらなかったこと、数々のスキャンダルを乗り越えての再選なので、自由党にとってはまずまずの結果なのだろうと思う。(コメンテーターの中には、過半数が取れなかったのだから事実上の敗北だ、と吐き捨てるように言っていた人もいたけれど。)
今回2019年10月21日に行われたカナダの連邦議会選挙は、4年に一度、10月の第三月曜日に行われることが決まっているものだ。日本のように日曜日にやるのではなく、平日にやるのがなんだかカナダらしい。
日本のように期日前投票の制度もあるし、企業によっては投票に行くことを理由に早退したり遅刻できるらしいと聞く。ずいぶんフレキシブルである。
投票日当日にはLift(Uberのようなライドシェアアプリ)では半額キャンペーンをしていて投票へ行くことを促していた。
近所を歩けば道にこんな落書きもあって、少しほっこりしていた。
最終的な投票率はこちら、65.9%。カナダでは投票する前に投票をするための登録をしなくてはいけないので、日本の投票率と単純に比較することはできないが、過去と比べるとそう悪くはない数字である。
ちなみに日本の投票率は以下の通りである。
国政選挙の投票率は、平成29年10月に行われた第48回衆議院議員総選挙では、53.68%、令和元年7月に行われた第25回参議院議員通常選挙では48.80%となっています。
選挙の前にCBC(カナダ放送協会、日本で言うところのNHK)のラジオを聞いていて、とても印象的だったインタビューがある。投票所に期日前投票に来ていたシリアから難民としてカナダへ来て、現在はカナダ国籍を保有する男性に対してのインタビューである。
彼は、人生で初めて選挙で投票するのだと言った。投票する人を自分で決めることができ、それが誰にも知られないなんて、こんなに嬉しいことはないし、民主主義の国にいるのだということを実感している。今回、投票するにあたって政党ごとに政策を調べてどこに投票するか決めてきたんだ、と。
そうなのだ。世界には投票をして自ら政府を選ぶことができない人がいるのだ。日本だって普通選挙法が制定されたのは1925年(94年前)、女性参政権が認められたのは1945年(74年前)と、そう遠く昔の出来事ではない。
私たちの祖先が努力の後に選挙権を勝ち取った、という事実を私を含む多くの日本人は忘れかけているのかもしれないと、インタビューを聞きながら考えた。
ちなみに様ざまなバックグラウンドを持つ人がカナダ人として生活しているカナダでは、選挙について説明する資料は先住民族の言語16に加えて32ヶ国語に翻訳されている。(日本語はない。)
アルバニア語、アラビア語、アルメニア語、ベンガル語、カンボジア語、簡体字、繁体字、クロアチア語、ペルシャ語、ドイツ語、ギリシャ語、グジャラート語、ヘブライ語、ヒンディー語、ハンガリー語、イタリア語、韓国語、ポーランド語、ポルトガル語、パンジャーブ語、ルーマニア語、ロシア語、セルビア語、ソマリ語、スペイン語、タガログ語、タミル語、トルコ語、ウクライナ語、ウルドゥー語、ベトナム語、イディッシュ語。
投票へ言語的な問題から行けない人を減らす努力が見られて好感が持てる。
カナダという国で生活をしていると、今まで当然のように持っていたものが当然ではないこともあるのだということに気が付かされ、その度にはっと目が覚めるような気持ちになる。そんな気付きをくれるカナダに感謝している。