本好きな私にとって著者とは特別な存在である。私にまだ知らない世界や知識を教えてくれる著者。とても有名な著者であればインタビュー記事を読んでその人となりを知ったり、講演会やイベントなどに行ったりしてお会いすることもできるのかもしれないけれど、それはごく限られた著者だけだと思う。基本的にお会いできる機会は限られていると思う。
旅の終盤、Downtown Austinに到着してみて驚いた。何かイベントをやっているらしく人が溢れていた。見まわしてみると、Book Festivalらしい。州庁舎の中でのイベントだけでなく、屋外にもテントがいくつも建てられ、著者による講演会やクロストーク、子ども向けの読み聞かせ、などのイベントが催されていた。
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イベントは無料ですべての人に開かれているのが素敵だ
本を売っている大きなテントもある。それも大人向けの本のテントと子ども向けの本のテントが両方ある。お会計をするための長い列。電子書籍が普及している今、これほどの行列ができていることに私は驚いた。一体何が起こっているのだろうか。
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大人用のテント
隣のテントを覗いてみてすぐに疑問は解消された。著者がサインをするために待機していたのだ。しかもたくさんいる。本を買った客は著者のブースまで行ってサインをもらっていた。大人も子どももみんな嬉しそうだ。しかもそれほどサインブースは混んでいないので、著者と楽しそうにお話する姿も。このサインブースはサイン以上の価値を読者に与えているのだということがわかった。読んだら古本屋に売ることも普通の本であれば起こり得るだろうけれど、きっと著者と話してサインをもらった本はきっと自分でずっと大切に持ち続けるのだろう。本好きな私としては、このイベントに立ち寄ることができてとても嬉しかった。
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著者と話ができて嬉しそう
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大人のサインブースにはたくさんの本を抱えた人が目立つ
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屋外には臨時の古本屋さんも。定価で買えない人への配慮がやさしい
Austinは今回旅したSan AntonioやHoustonと比べてかなり雰囲気が違う。Wholefoodsの第一号店の地だし、最近ではSilicon Hills(Silicon Valleyではなく)と呼ばれ最新のテクノロジー企業が集まっている街なのだ。街の雰囲気(治安)が良いのでこのような素敵なイベントが屋外で開かれるのだと納得した。
ちなみに、Austinの観光名所のひとつとなっているHope Outdoor Galleryという場所では壁に絵を書き放題。プロでもアマチュアでも、子どもでも大人でも、地元の人でも観光客でも自由にスプレーで絵を書くことができる。定期的に消されて、その後はまた他の人が書いていくというとても面白い取り組みだ。私が滞在した時には、地元のダンスグループと思われる人たちが動画撮影をしていた。確かにこの壁は動画に生えるに違いない。
辺りはスプレーのシンナーの匂いが充満していたので、私はあまり長い間はいられなかったけれど、とても面白い場所だった。なんだかこの寛容で自由な感じがAustinを表しているような気がした。
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親子でペイント
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作業は真剣そのものである
正直なところ、私はアメリカを旅する中で住みたいと思える場所は今まで一つもなかったけれど、Austinなら住んでみたいと思えた。それほど良い雰囲気の街であり、いい意味でアメリカらしさのない街だった。
まぁそんなことを言っても、アメリカに住むビザをもらうのは難しいので、そんなことを考えるだけ無意味なのだけれども。