日本の博物館と北米の博物館は同じようで全く違う。伝えたいことは同じでも、展示の仕方が全然違うのだ。よく日本の博物館に行っていた私にとって、北米の博物館へ行くことは展示を楽しむだけでなく日本のそれと比較できるのも楽しい。
北米の方が表現が直接的で体験型だと思う。だから大人が行っても楽しい。そしてたまに展示がグロテスク過ぎて、大人の私も目をそらしたりする。そんな時、私は日本人なのだなぁと思う。
Downtown Houstonに滞在中、The Health Museumを訪問した。このような種類の博物館は日本のそれとはかなりかけ離れていることが多いので少し期待していたのだけど、そこには私の期待を上回るリアルで色いろ考えさせられる展示があり、子どもがメインターゲットの博物館なはずなのに大人の私もまた楽しませてくれた。肉体的なこと、精神的なことの両方を含む身体のことについて展示されている博物館であった。その中でも特に面白かったのは、2つ。
この展示の意味するところを知らずに見たら、少し驚いてしまうかもしれない。これはアーティストが作った作品で、実物の人の型を取り、それをしわや毛の一本にいたるまで精巧に再現し制作されたボディスーツである。私が参加したこの展示のツアーでは、ガイドからこのボディスーツのモデルとなった人がどのような人生を送ってきたのかを聞いたり、身体から得られるヒントを頼りにその人の人生を想像したりした。あるボディスーツには乳癌の手術の跡があったり、他のボディスーツには自転車競技者を続けることで発達した脚を見ることができたりした。ガイドが、私たちの身体もこの中にあるボディスーツのように唯一無二なもので、誰ひとりとして同じ身体を持った人はいないのだということ、そして服を着ることでそれを隠すこともできること。もしかしたら目に見えないだけで、目の前にいる人はなんらかの問題を抱えている可能性があるかもしれないこと、などを話してくれた。そしてあなたはあなたの身体に自信を持つことができること、自分の身体を愛すことができるのだということを教えてくれた。自分の身体について特に考えたことがなかった私はとても良い時間を過ごすことができた。
もう一つは、これ。
なんと実物の豚の肺である。これは煙草の害を伝える展示で、係の人がいて空気を入れたり出したりしたり、見学者に肺を触らせてくれていた。豚の肺は人間の肺にとても似ているという。その肺を手袋をはめて触って、これまた不思議な気分になると同時に煙草の害について考えることができた。ちなみに、この豚の肺は特殊な加工をしているので、3ヶ月間展示できるのだそうだ。
この博物館はこのような展示のほかにプレイグラウンドを模したコーナーなどもあり、小さな子どもでも楽しみながら学べるようになっていた。なかなか面白い。
さてその後には、この博物館から歩ける場所にあるJapanese Gardenへ。日本人としてやはりJapanese Gardenは見学しなければならない。
この日本庭園には1990年のヒューストン・サミットに出席した海部俊樹が寄贈した茶室がなどがあると聞いていたので少し期待していたのだけど、こちらは博物館とは打って変わってリアルとは程遠い「日本庭園」だった。
いつも思うのだが、自然科学系の展示はとてもリアルなのに、それ以外のものはリアルとは程遠いことが多い。その違いに少しがっかりしつつも、少し面白いと感じてしまう私である。