最近、少し生活のリズムが変わってきた。そうすると今まであまり遭遇しなかった光景に出くわすことがある。このあいだ久しぶりに見たのはゴミ収集車だ。見るたびに思うのだが、車はかなり大きいので、小さな私は横を通るのが少し恐い。この日もゴミ収集車を小走りで通り抜けた。
ゴミ収集の方法は日本のそれとはかなり違う。まず、カナダでは一軒家の場合、各家庭に規定の大きなゴミ箱が配布される。緑は生ごみ、黒は一般ごみ、青はリサイクルごみ。分別方法は結構細かく分かれているけれど、私の住んでいる家のオーナーは小さなことは気にしないタイプなので、私の家の分別はかなり適当だ。
そのゴミ箱を決まった曜日に家の前に出しておくと、生ごみは週1回、一般ごみとリサイクルごみは隔週で収集してくれる。カナダに来た当初は収集の間隔が空きすぎていると思ったが、慣れてしまえばどうということはない。
トロントのゴミ収集員は一人で収集している。大きな収集車にはUFOキャッチャーのようなはさみがついていて、それを運転席から操作してゴミ箱をつかみ、ゴミを車の中へ入れて回収する。少し難しそうだ。同じゴミを回収する、という仕事なのに日本のそれとは全く違うアプローチなのが面白い。気候や道路状況などが関係しているのは間違いないが、最小限の労力で回収するというカナダと、チームプレーでマンパワーに頼った回収方法を選択している日本。文化の違いを感じられずにはいられない。
さて、このカナダのごみ収集員はたびたび「たくさん給料をもらってやりがいのない仕事をするか、それとも収入は少なくともやりがいのある仕事をするのはどっちがいいか」という話の中に登場する。実はカナダのゴミ収集員はそれなりに高給取りなのである(日本は所属組織によって異なるらしいが)。少しデータが古いのだが、2013年のカナダ人の平均給与は約CA$47,200なのに対して、ゴミ収集員はCA$55,407だ。つまりゴミ収集員の給与平均はカナダの平均給与よりも高い。聞いた話によれば、皆がやりたくない仕事だから給料が高いのだという。「お金をただ稼ぎたいのであればゴミ収集員になればいいんじゃないの?俺は絶対嫌だけどね」と、皆にとって必要な仕事をしてくれているゴミ収集の仕事に対して、そんなことを言う人もいるが、どんな仕事を選ぶのかは個人の価値観や状況次第。多様な価値観があるからこそ社会が成立しているということを忘れてはいけない。
ゴミ収集車を横目で見ながら感謝をするとともに、いずれにしてもお金を稼ぐことはそんなに簡単ではないのだな、と思うのだった。
参考:Canada’s ‘last dirty secret’: magazine reveals who earns what