私がトロントのレインボーさ(LGBTQ(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー・ジェンダークィア)を尊重する文化)を最初に実感したのは、身体の不調からトロントの婦人科(のようなところ)に行った時のことだった。
まず、診察の前に記入する問診表、その質問が日本のそれとはかけ離れたものだったのだ。自分の生物学的な性について、自分の性自認について、次にパートナーの性別について、今までどんなセックスをしたことがあるか…などなど。確かに、症状によっては正確な診断を下すために必要なのかもしれない、と理解はしたものの、私の症状にこの質問たちは必要ないような…と思いつつ、なんとなく堂々と記入できず待合室でこそこそ項目にまるを付けた。誰が見ているというわけでもないのに。と同時に、選択肢を見ると様ざまな性の形がある、ということがわかる。日本の婦人科には生物学的に女で、自分を女性と認識していて、パートナーは男性、ということがすべての前提にある。でもトロントの婦人科は前提がない状態で自分の状況を説明する必要がある。なんだか新鮮だった。
少しどきどきしながら問診表を書き終え、ふと周りを見回すとそこにはバケツのようなものに入った大量のコンドーム。しかもたまに患者さんが普通に持っていく。それは間違いなく大切なものだけど、こんなにも大量にあからさまに置いてあるのを初めて目にして、性についてオープンなカナダの文化に衝撃を受けた。
この先にはどんなことが待ち受けているのだろう、と少し不安になりながら診察室に入る。だが全く心配は必要なかった。ドクターはびっくりするほどフレンドリーで何でも話せた。ちなみにドクターたち(そのクリニックにはその時4人いた)は全員女性だった。日本の婦人科で女性のドクターを探すのはなかなか難しい。でもカナダでは全員女性だったのだ。それとなく受付の方(ドクターだけでなく事務の人も全員女性だ)に聞いてみると、婦人科のドクターは当然女性、のような認識を持っていた。私はなんだか感激した。
もちろん個人差はあると思うが、日本の婦人科の男性のドクターに積極的に質問するのは少数のような気がする。少なくとも私は最低限の質問しかできない。でもカナダのこのクリニックでは気軽に女性のフレンドリーな医師に不調について相談でき、アドバイスをもらうことができる。病院なのだからある意味当たり前のことなのだけど、なんだかとっても心強い。
ちなみに、トロントのウォークインクリニックは誰でも(カナダ人でなくても、健康保険に加入していなくても)無料だ(処方された薬は有料)。私の検査歴を確認した後、ドクターから無料の検査を勧められたので受けた。2週間後くらいに結果がわかるから、問題があったら連絡するね、と言われ連絡を待っていたのだけど、連絡がこなかった。きっとなんともなかったのだな、と思ったのだけど、でもそこは日本人の私。もし連絡し忘れていたら困るな、と思いしばらくしてから問い合わせた。問題がないことを直接確認してとりえず安心したのだった。
※写真は23日に行われたトランスマーチ(プライドパレードより小規模なかんじのパレード(マーチ))で最後尾を走っていたバス。公共交通機関であるTTC(トロント交通局)のバスもレインボーカラーになりLGBTQを祝福している。